
ログハウスの開き窓が、うまく開閉できなくなってしまいました。窓を開閉するための部品が、劣化と摩耗によりうまく噛み合わなくなっていましたので、今回はその部品を交換します。
状況
築20年になるログハウスの点検に伺ったところ、2階の部屋の片開き窓がハンドルをまわしてもうまく開閉しなくなっていました。家主様は慣れっこで、開き方にコツがあるようです。窓枠をつかみながら少し強引に押せばなんとか開くという状況です。

窓枠下部のハンドル部分のカバーを開けて中の部品を見てみると、経年の劣化により中の歯車が摩耗し、うまく噛み合わず、スムーズな動作ができなくなっていました。

部品構成
今回の片開き窓はカナダのLOEWEN(ローウェン)社製のもので、窓を開く機構となる部品は以下の構成となっています。

各部品の取り付け場所と、左右開き窓でどのような違いがあるかを少し整理しておきます。
部品名 | 取り付け場所(すべてネジ留め) | 右開き窓?左開き窓? |
---|---|---|
トラック | 窓本体の下部 | 左右どちらの開き窓でも 同じ仕様 |
ブラケット | 窓本体の下部 | 左右の開き窓で 異なる仕様 |
ヒンジ | 窓本体の上部と下部 窓枠側の上部と下部 ※窓枠に取り付けるベース部品と、 窓本体に取り付けてそのベース上を スライドする部品がセットになっている | 左右どちらの開き窓でも 同じ仕様 ※この部品は左右が反転した 上下セットとなっており、上下を 入れ替えることで左右開きに対応できる |
オペレータ | 窓枠側の下部 | 左右の開き窓で 異なる仕様 |
カバー | 窓枠側の下部 | 左右どちらの開き窓でも 同じ仕様 |
ハンドル | 窓枠側の下部 | 左右どちらの開き窓でも 同じ仕様 |
処置方法
劣化により摩耗した各部品を新しい部品に取り替えていきます。
おおまかな作業の流れはこのようになります。
- step1準備
作業中に取り外した窓を一旦床におきますので、傷がつかないようタオルを敷くなど、養生をしておきます。
- step2オペレータ交換
窓枠下部の木枠を外して、オペレータを交換します。
- step3窓の取り外し
各部品の接合部分を外すと窓が外れますので、落とさないよう注意しながら窓を外します。
- step4窓側ヒンジバー交換、オペレータトラック交換、ブラケット交換
取り外した窓に取り付けられている古い部品を交換します。
- step5窓枠側ヒンジベース交換
窓枠側に取り付けられているヒンジのベース部品を交換します。
- step6窓の取り付け
ヒンジのベース部品にヒンジのスライド側部品を差込みながら、窓を取り付けます。
- step7オペレータの接続、カバーとハンドルの取り付け
窓枠側のオペレータからのびるアームを窓本体のトラックとブラケットに接続します。
- step8動作確認
ハンドルをまわしてスムーズに窓が開閉するか確認して終了です。
それでは、実際に行った部品交換作業をみていきます。
まずは、なんとか窓を開きます。

カバーとハンドルを取り外し、オペレータの取り付けネジが見えるようにします。

オペレータの取り付けネジを外すのに邪魔な窓枠下部の木枠を慎重に取り外します。
つなぎ目にカッターを入れ、スクレイパーのような薄くて硬いものを差し込み、少しずつ叩きながら引き上げます。

木枠の左右を均等に慎重にすこしずつ持ち上げていきます。

木枠をとりはずすと、オペレータの取り付けネジにアクセスできるようになります。

オペレータからは窓本体のトラックとブラケットの2箇所に腕がのびており、それぞれを外していきます。


オペレータを窓枠から外していきます。

ここでトラブル発生です。
築20年のログハウスですので、部品を固定しているネジ穴も摩耗している可能性があり、ドライバで外す際にナメてしまう可能性を懸念していました。
案の定、オペレータを固定している5つのネジのうち、2つのネジがどうしてもナメてしまい、簡単には取り外せませんでした。
ここは一旦オペレータの取り外しをスキップして、手順を先に進めることにします。
ヒンジ部分の取り外しです。
窓枠の下部と上部、それぞれの箇所を外します。

上下2箇所のヒンジの接続を解除すると、窓本体がフリーになります。
画像向かって左に窓をスライドしすぎると窓本体が外れますので注意が必要です。
フリーになった窓本体を持ち、ヒンジのベース部品上をスライドさせながら窓本体を完全に取り外します。

窓枠下部に残ったヒンジのベース部品をプラスドライバで取り外し、

新しいヒンジのベース部品を取り付けます。

窓枠上部も同様に、古いヒンジのベース部品を取り外し、

新しい部品を取り付けます。

取り外した窓本体の上部には、ヒンジのスライドする側の部品が取りついていますので、プラスドライバで新しい部品に交換します。



窓を上下ひっくりかえして、下部についている部品を交換していきます。
窓本体の下部には、ヒンジ、トラック、ブラケットが取りついています。

こちらもプラスドライバのみで交換できました。

窓の上下を確認して持ち、取り外した時と逆の手順で取り付けていきます。
窓本体の上下に取り付けたヒンジの黒いスライド部分を、窓枠側のヒンジのベース部分に差し込みながら、窓本体を取り付けます。
取り付け後は、速やかに窓本体のヒンジからのびる腕を窓枠側のヒンジのベースにある突起に固定します。

上下ありますので忘れずに。

ここまでくれば、山場は乗り切りました。

というわけにはいかず、プラスドライバでネジをナメてしまったオペレータの交換が残っています。
いくつか方法を考えましたが、今回は持参した細いマイナスドライバでなんとかネジを回すことができました。

無事、オペレータを取り外せました。

20年分のホコリを取り除いて、新しいオペレータを取り付けます。

オペレータから伸びる2本の腕を、窓本体のトラックとブラケットに接続します。

木枠を戻す前に、ハンドルだけオペレータに差し込んで動作チェックをします。
問題なく開閉できることを確認して、木枠をもとに戻します。
戻す際には釘穴の位置をあわせ、あて木によって上からかなづちで少しずつ叩き込んでいきます。


20年経過した木枠は非常にもろくなっていることがあります。
取り付ける際に左右がすこし窮屈に感じるときは、無理に押し込まずに少しやすりをかけてから戻します。
またひび割れなど、部位によっては損傷する場合もありますので、適宜細い釘で補強してから戻します。
最後にカバーとハンドルを取り付けて完成です。

最終的な動作確認をおこない、作業は全て終了となります。
まとめ
20年経過したログハウスの窓部品を交換し、特に注意するべき3つの作業リスクをご紹介させていただきました。
- 古いネジをナメてしまうリスク
- 窓本体の取り外し時に落下させるリスク
- 木枠を破損させるリスク
ログ本体はまだまだ元気ですが、このような金属部品の摩耗はある程度仕方がないのかもしれません。
しかし古い窓だからと諦めず、ご自身の手で窓を蘇らせることも検討してみてください。